顕微鏡撮影機材:顕微鏡の光学系 対物レンズについて

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 顕微鏡の光学系には対物レンズの像の結び方によって2つのタイプがあります。
一つは、昔の顕微鏡や低価格の現行機種に採用されている‘有限補正系’で、もう一つは高級機種で採用されている‘無限遠補正系’です。

 有限補正系の顕微鏡の画質が悪いかというと、そんなことはありません。明視野観察、暗視野観察、位相差観察、偏光観察などでは無限遠補正系と変わらない性能を発揮します。有限補正系の対物レンズは、虫眼鏡と同じように対物レンズ自体が像を結ぶように設計されています。対して、無限遠補正系の対物レンズは単体では像を結ばないように設計されています。対物レンズで拡大された光は平行光となって結像レンズに到達し像を結びます。有限補正系の最後のレンズをレンズの外に出したような感じになります。無限遠補正系のメリットは、対物レンズから出た平行光にミラーやプリズムなどを入れる事ができることにあります。そのため、光路にミラーが入る金属顕微鏡や蛍光顕微鏡に採用されているのは無限遠補正系です。

 顕微鏡の購入にあたって注意しなくてはいけない点は、有限補正系、無限遠補正系を混在させないというところです。有限補正系と無限遠補正系は顕微鏡本体が違います。この2つの光学系には互換性がありません。有限補正系の本体には有限補正系の対物レンズしか付けられません。また、有限補正系には機械鏡筒長というものがあり、メーカー毎、機種毎に対物レンズの取り付け面から接眼レンズの取り付け面までの距離が決められています。どのメーカーも多くの機種で160 mmの機械鏡筒長を採用していて、対物レンズに160と表記されています。(古いレンズにはこの表記がありません。おそらくは、当時全てが有限補正系で、機械鏡筒長が160 mmだったからでしょう。)有限補正系の金属顕微鏡などでは210 mmとなっているものもあるので、有限補正系の対物レンズを購入する際は機械鏡筒長を確認してください。無限遠補正系の対物レンズには∞の表記があり、メーカーが異なっていても混在させることができます。有限補正系の対物レンズも、機械鏡筒長が同じであれば異なるメーカーのレンズを混在させられます。私の環境では有限補正系にオリンパスとニコン、無限遠補正系にオリンパスとZeissとLeitsと詳細不明の中国メーカー製のレンズが混在しています。対物レンズの取り付け面からピントが合う位置までの距離は同焦点距離と言って、現在はどのメーカーでも多くのレンズで同焦点距離は45 mmとなっているので、殆どのレンズが混在可能です。一部の特殊なレンズには同焦点距離が異なる物もあります。また、古い小さなレンズは同焦点距離が短い設計となっています。オリンパスの古いレンズは同焦点距離が36.65 mm、ニコンの古いレンズは同焦点距離が33 mmほどです。同焦点距離の異なるレンズは混在させられないので注意してください。

同焦点距離はピントが合う試料面から対物レンズの取り付け位置までの距離です。
同焦点距離が同じであれば対物レンズを変えてもピントはほぼ合っています。
有限補正系の機械鏡筒長は、
対物レンズの取り付け面から接眼レンズの取り付け面までの距離です。
有限補正系は対物レンズの焦点距離が決まっているので、
機械鏡筒長が異なると像を結びません。
無限遠補正系は結像レンズまでは平行光なので距離を自由に設計でき、
フィルターなどを入れやすくなっています。


 最後に対物レンズの取り付けネジについてです。レンズをレボルバに取り付けるネジは、多くのものでRoyal Microscopical Societyという仰々しい名前の団体が規定したRMS規格を採用しています。RMSは直径20.32 mmのネジになります。古いものから現行機種まで、殆どの対物レンズはRMS規格のネジで固定されています。金属顕微鏡は照明の光を通す為の光路がレンズ周辺に設けられているため、レンズ全体を太くしてあります。そのため、RMS規格のネジではなく直径26 mmなど太いネジになっているものもあります。蛍光顕微鏡も現行機種ではRMSよりも太いネジとなっているものが増えています。このあたりのレンズはまだまだ高いので要らぬ心配かもしれませんが、レンズ購入前に取り付けネジの直径は確認しておきましょう。


有限補正系対物レンズ Olympus

Olympus SPlan
有限補正系対物レンズの上位クラスの対物レンズです。
機械鏡筒長 160 mm
同焦点距離 45 mm
アクロマート
レンズ取り付けねじ:RMS
アクロマート(Achromat)は青と赤の二色の色収差を補正したレンズです。
対物レンズにPlanと書いてあるのはplaneの略で、
視野全体にピントが合うように補正されているレンズを示します。
SPlanはオリンパスだけが使っている表記で、Planより上のグレードという感じでしょうか。
レンズ表記の下のカラーリングの色はメーカー共通で倍率を表しています。
黒: 1倍
赤: 4倍
黄: 10倍
水色: 40倍
白: 100倍
と決まっています。
レンズ先端に近い部分のカラーリングは液浸の際の媒質を表します。
黒はオイルになります。

Olympus A
機械鏡筒長 160 mm
同焦点距離 45 mm
アクロマート
レンズ取り付けねじ:RMS
SPlanよりも下のクラスです。
CH-2などについていたものです。

Olympus位相差対応対物レンズ
位相差対応の対物レンズにもAとSPlanがあります。
どちらも同じ位相差コンデンサーで使えます。
機械鏡筒長 160 mm
同焦点距離 45 mm
アクロマート
レンズ取り付けねじ:RMS
レンズ先端側の赤のカラーリングは位相差対応であることを示しているようです。

Olympus DPlan Apo 60
機械鏡筒長 160 mm
同焦点距離 45 mm
アポクロマート
レンズ取り付けねじ:RMS
カラーリングは青です。
アポクロマート(Apochromat)は赤、青、紫の三色の色収差を補正したレンズです。

古いOlympus 4倍対物レンズ
機械鏡筒長 160 mm
同焦点距離 36.65 mm
アクロマート
レンズ取り付けねじ:RMS

古いOlympus 10倍対物レンズ
機械鏡筒長 160 mm
同焦点距離 36.65 mm
アクロマート
レンズ取り付けねじ:RMS
倍率を表すカラーリングの色が現在の規定とは違っています。
右側二つはレンズ先端付近に位相差対応のカラーリングもあります。
位相差の種類によって色が違うようです。
昔の位相差によくある表記で、赤はpositive, 白はnegativeのようです。
PLLはpositive low low, NMはnegative mediumだそうです。

古いOlympus 40倍対物レンズ
機械鏡筒長 160 mm
同焦点距離 36.65 mm
アクロマート
レンズ取り付けねじ:RMS
倍率を表すカラーリングの色が現在の規定とは違っています。

古いOlympus 100倍対物レンズ
機械鏡筒長 160 mm
同焦点距離 36.65 mm
アクロマート
レンズ取り付けねじ:RMS
倍率を表すカラーリングの色が現在の規定とは違っています。
今はレンズ先端のカラーリングは液浸の際の媒質を表します。
現在の決まりでは黒はオイル、白は水、赤はその他となっています。
この写真の右端と左から二番目のレンズには赤と白の二重のカラーリングがありますが、
この二本は位相差対応レンズなので位相差のnegative (白)とpositive (赤)です。
二重になっている意味は分かりません。
開口数からするとオイルの液浸なのですが、そのカラーリングは無いようです。

古いOlympus 1.3倍と2倍の対物レンズ
機械鏡筒長 160 mm
同焦点距離が45 mmよりも長い謎のレンズ
アクロマート
レンズ取り付けねじ:RMS
倍率を表すカラーリングの色が現在の規定とは違っています。
同焦点距離が50mm以上あるので同焦点距離36.65 mmの対物レンズとは混在させられません。
同焦点距離が45 mm の対物レンズとならピントを合わせなおして使うことは可能です。

左: Olympus 48倍対物レンズ
機械鏡筒長 200 mm
同焦点距離 不明
アクロマート
レンズ取り付けねじ:RMS

右: Olympus 100倍対物レンズ
機械鏡筒長 210 mm
同焦点距離 不明
アクロマート
レンズ取り付けねじ:RMS
どちらも金属顕微鏡用のレンズと思われます。
機械鏡筒長が異なる顕微鏡では使用できません。
現在これらのレンズが使用できる顕微鏡を入手するのは難しいでしょう。

有限補正系対物レンズ Nikon

古いNikon対物レンズ
機械鏡筒長 160 mm
同焦点距離 33 mmほど
アクロマート
レンズ取り付けねじ:RMS
カラーリングの色は現在の規定と同じです。
ニコンのS型顕微鏡などに付いていた対物レンズです。
オリンパスの古い対物レンズとは同焦点距離が異なるので混在させられません。

Nikon対物レンズ
機械鏡筒長 160 mm
同焦点距離 45 mm
アクロマート
レンズ取り付けねじ:RMS
カラーリングの色は現在の規定と同じです。
20倍は明るい緑です。
オリンパスの同焦点距離が同じ対物レンズと混在させられます。


無限遠補正系対物レンズ

Olympus金属顕微鏡用対物レンズ
Olympus Neo SPlan NIC
NICは微分干渉対応を示します。
NICと付いていないものは微分干渉非対応です。
同焦点距離 45 mm
アクロマート
レンズ取り付けねじ: 26 mm
レンズの取り付けネジがRMSではありません。
他のレンズとは混在させられません。
レンズ先端に黒いフードが付いているのレンズは暗視野観察対応です。
レンズが太いのは暗視野用の光路を内蔵するためのようです。


Olympus蛍光対応対物レンズ
UPlan Apo
同焦点距離 45 mm
アポクロマート
レンズ取り付けねじ:RMS


Olympus蛍光対応対物レンズ
UPlan Fl
同焦点距離 45 mm
セミアポクロマート
レンズ取り付けねじ:RMS

Leica蛍光対応対物レンズ
セミアポクロマート
同焦点距離 45 mm
レンズ取り付けねじ:RMS

なぞの中国製対物レンズ
同焦点距離 45 mm
アクロマート
レンズ取り付けねじ:RMS
eBayで新品を3000円ほどで購入しました。
蛍光対応ではないのですが蛍光顕微鏡で使えています。
確かにPlanで品質に問題は無いようです。


Zeiss微分干渉対応対物レンズ
Plan NeoFluar
同焦点距離 45 mm
セミアポクロマート
レンズ取り付けねじ:RMS
蛍光と微分干渉に対応したレンズです。
Zeissは同焦点距離のレンズごとのずれが大きいです。
レンズを変えた時のピントのずれが大きいので最初は驚くかもしれません。

Zeiss対物レンズ
AchroPlan
同焦点距離 45 mm
アクロマート
レンズ取り付けねじ:RMS
Planですが視野はあまりフラットではありません。

ここまでに載せた取り付けネジがRMSの無限遠補正系対物レンズは全て混在させられました。

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