ミジンコウキクサの顕微鏡観察

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 庭のビオトープにミジンコウキクサが生えてきました。ミジンコウキクサは最小の顕花植物なのだそうです。最小とか最大とかが大好きなので顕微鏡で観察してみました。ミジンコウキクサの大きさは1 mm弱です。写真ではわかりにくいのですが米粒のようなラグビーボール形をしていてウキクサのような葉の形はしていません。根もありません。水面に一部を出して浮いています。水面に出ている部分には気孔があります。一見藻のようなのですが、気孔を見て「確かに草なのだな」と納得しました。増殖はダルマ型にくびれて分裂して増える栄養繁殖を行っています。顕花植物なので種子もつけるのですかね。花を見てみようと思ったのですが見つけられませんでした。代わりにミジンコウキクサに寄生して成長するトビムシを見つけました。ミジンコウキクサの内部で成長して外に出てくるようです。肉眼では全く確認できないところでこんな事が起きているのに驚きました。

小さい方がミジンコウキクサです。大きい方はウキクサです。
ミジンコウキクサに寄生している藻類やツリガネムシ、ミズヒラタムシ、ワムシ、ミドリムシらしいものが見られます。ミジンコウキクサをピンセットで摘んで持ってきただけでこれだけの生き物がくっついてくることに驚きました。動画後半はトビムシです。動画の最後にトビムシの成虫がジャンプします。あまりにも早いので1フレームで消えてしまいました。ハイスピード撮影してみたいですね。

矢印の部分に気孔が見られます。他にもあって1個体あたり10個ほどの気孔があります。落射暗視野照明では水面が反射して水面下を見ることができません。

落射暗視野照明と透過光を組み合わせると個体全体を観察することができます。

透過の暗視野観察では全体を観察することができます。矢印で示したものが寄生しているトビムシの幼虫です。

ミジンコウキクサの中では動かずじっとしています。

ミジンコウキクサの押しつぶし標本をDNAを染める蛍光色素DAPIで染色しました。UVを当てると染色されたDNAが青い蛍光を発します。青白い点状に見えるのが核です。一つの細胞に一つの核があります。頑張れば全細胞数を数えられそうですね。うすくぼんやり光っているのは細胞壁の自家蛍光です。

青色の励起光を当てた場合の自家蛍光です。孔辺細胞が黄色の自家蛍光を発しています。

緑色の励起光を当てた場合の自家蛍光です。孔辺細胞が赤色の自家蛍光を発しています。

DAPIの蛍光と重ねたものです。赤色の気孔が植物体の一部に集中しているのがわかります。この部分だけが水面に出ています。水面から出ている部分はDAPIの蛍光がうすくなっています。もしかしたらUVを遮っているのかもしれません。

染色体も観察できました。非常に小さな染色体でした。
Urbanska-worytkiewicz, K. 1980. Cytological variation within the family of Lemnaceae. Veröff. Geobot. Inst. ETH Stiftung Rübel Zürich 70: 30–101.
この文献によると染色体数は30, 40, 50, 60だそうです。私は植物染色体を研究してきたのでこの結果を素直に信じることができません。


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